Kudo & Associates


HOME > 業務内容 > 係争関係 > 特許権行使交渉の基本的な流れ

特許権行使交渉の基本的な流れ

特許権行使交渉の基本的な流れは、以下の図にあるようなものです。 簡単にご紹介します。
a31_f_chart.gif


 特許権の行使交渉の基本的な流れを、簡単に説明します。 まずは、案件のエントリーです。 「この特許権をだれそれが侵害しているらしい」とか、「だれそれの会社は当社の製品をコピーしているから、何とかその製品に関する特許権で対抗できないか」とかの情報が特許部門や特許事務所などに寄せられて権利行使の交渉のためのプロセスが開始されます。ただし、実際に作業が開始されるためにはある程度確からしい情報、責任ある立場の人間からのエントリーである必要があります。

 案件がエントリーされると、実際に権利行使をすることができるのかできないのかを調査する段階に入ります。
この中で前提的調査は、自社の特許権が確かに有効に存続していることの確認と、 エントリーされた情報の確からしさを大まかに確認することです。

 権利行使のためには、侵害の立証が必要になります。そのための証拠を収集しなければいけません。 証拠は基本的には、実際に相手方が製造、販売した現物の証拠を確保することです。この現物証拠がどうしても確保できない場合には、これに代わる証拠を収集します。特許権の権利行使プロセスにおいて非常に困難なプロセスになります。

 収集された証拠に基づいて、侵害の立証を試みます。このプロセスには収集された現物証拠の物理的、科学的解析プロセスが含まれることがあり、リバースエンジニアリングの専門的知識を必要とすることが多いです。収集された証拠を技術的に解釈し、併せて、権利範囲の法律的解釈をも行い、侵害物と思われるものが特許発明の技術的範囲に含まれているか否か判断します。

 侵害立証の試みとともに、損害賠償の請求をする場合には、損害額の算定が必要となります。 損害額の算定をするためには、
まず第一に、侵害製品の特定が必要です。エントリー段階で、侵害の可能性が高い相手方製品の特定は、既にできている場合が多いですが、必ずしもその製品のみではなく、相手方の他の機種でも侵害が行われている場合がよくあります。したがって、相手方製品で侵害がある可能性があるものについては、一応の調査を行います。
 侵害製品が特定されたら、第二に、特定された侵害製品により、自社に与えられた損害額を算定するための調査を行います。 従来、もっとも一般的なケースとして、実施料相当額を請求する場合について考えると、その特定された機種が 「特許権の行使可能な期間内に、どの程度の数量、生産、販売されたのか」また、「その間、その機種の取引価格はどのくらいであったのか」を、知る必要があります。第三に、妥当な実施料率を想定して、 実施料相当額を算出し、可能な損害賠償請求額を定めます。第四に、相手方から自社に対して行われ得るカウンター攻撃の調査を、一定の範囲で行います。第五に、自社と相手方との政治的問題などを勘案して、 攻撃のタイミング、その他の取引条件(たとえば支払条件、グラントバック(戻し特許)など)、最低防衛ライン (譲渡限度)、交渉の進め方などを決定します。


 通常相手方への攻撃は、警告書の送付により始まります。しかし、最終段階に至る前に、面談交渉へと移行します。書面のやり取りだけでは時間がかかりすぎ、また、複雑な技術討論や最終的な詰めの条件を模索する段階で、相手の真意を的確に把握するのが困難だからです。 交渉は、一般的に、警告書の発送と相手方からの「非侵害、特許無効」の第一回の反論に始まり、前半の技術論争、中盤の和解額(損害賠償額)の算定の論争、終盤の双方の譲渡プロセスからなっています。

 交渉により大まかな合意が形成されると、契約書の作成段階に入ります。 実際、この段階は交渉プロセスの一部と捉えてもよいかもしれません。細かい条件で綱引きが行われます。ここで、詰めを誤ると、せっかくの合意が破棄される可能性もあります。契約書に両者が調印するまでが交渉です。

 最終的に合意に達せず、政治的問題がなく、予算も確保できる場合には、訴訟に踏み切る場合もあります。


 交渉の基本的な流れは、以上のようなものですが、これらは必ずしもシリーズに流れるものではなく、時にはパラレルに流れることもあります。また、これはあくまでも基本的な流れを示したものであり、変則的に解決に至ることもあります。たとえば、細かい戦略の立案なしに交渉に突入する場合もありますし、実質的な交渉に入れずに裁判にいたるケースもあるでしょう。